"子供の登場で、ねじがギリッと一回転、心に余計深く食い込むとすると、子供が二人ならどういうことになるのかな"1898年発刊、スティーブンキングも絶賛する幽霊譚である本書は、怪奇・心理小説の傑作にして、文学技法上の『信頼ならざる語り手・意識の流れ』の元祖として、様々な形で読書を幾通りも楽しませてくれます。
個人的には、イギリス・アメリカのミステリー、文学作品の翻訳家として、カズオ・イシグロやヘミングウェイ、ヴァージニア・ウルフを訳したことで知られる土屋政雄による新訳。ということで、久しぶりに再読してみました。
さて、そんな本書は、大きな物語の中で異なる物語が語られる『枠物語』(額縁小説)といった形式で、クリスマスイブに古い屋敷で集まって怪談をしている中でダグラスという『ある人物が朗読する』意図して名付けられていないヒロインー『家庭教師の女性による手記』を、手記そのものではなく、語り手『私が正確に書き写した』とする。何とも【構造自体からして複雑で】読者を虚実入り乱れる世界へと誘導しているわけですが。(物語自体は素直で読みやすいです)
最初に読んだ時は【幽霊譚】ホラーとして"アイシーデッドピープル"1999年に、ブルース・ウィリス、当時天才子役と騒がれていたハーレイ・ジョエル・オスメントを主演に公開されたミステリー映画『シックス・センス』の方を脳内イメージ再生させて、ビクビクしながらも果たして【幽霊は実際にいたのか?いなかったのか?】を多くの評論家と同じくうむむと(楽しく)悩まされたものですが。
再読となる今回は、20才にして既に『行き遅れ』と感じている異様にテンション高く、男女共にすぐに抱きつく"信頼ならざる語り手"婚活ヒロインによる、雇い主の『イケメン貴族に(あわよくば)気に行ってもらう』ための【自作自演ロマンス】として読んでしまって。振り回される登場人物たちの姿に(幽霊ではなく)『ヒロインから早く逃げてー!』と心の中で叫びっぱなしで【幽霊譚と違う意味で】怖かった(笑)
あと。原文の英語で読めない浅学非才さがもどかしいですが。この著者による意図して【多くの余白を読み手に残した物語】を日本語という孤立した独自の言語に訳した翻訳家たちの素晴らしい仕事ぶりに感謝したい。想像するしかなくても、特に本書に関しては【細心の配慮が必要だっただろう】とヒシヒシと感じるから。
じわじわくる心理小説好きな誰かへ、また読後に仲間たちとワイワイ、あれやこれやと話せる読書会の課題図書を探す誰かにもオススメ。
を購読しました。 続刊の配信が可能になってから24時間以内に予約注文します。最新刊がリリースされると、予約注文期間中に利用可能な最低価格がデフォルトで設定している支払い方法に請求されます。
「メンバーシップおよび購読」で、支払い方法や端末の更新、続刊のスキップやキャンセルができます。
エラーが発生しました。 エラーのため、お客様の定期購読を処理できませんでした。更新してもう一度やり直してください。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
ねじの回転 (光文社古典新訳文庫) Kindle版
両親を亡くし、英国エセックスの伯父の屋敷に身を寄せる美しい兄妹。奇妙な条件のもと、その家庭教師として雇われた「わたし」は、邪悪な亡霊を目撃する。子供たちを守るべく勇気を振り絞ってその正体を探ろうとするが――登場人物の複雑な心理描写、巧緻きわまる構造から紡ぎ出される戦慄の物語。ラストの怖さに息を呑む、文学史上もっとも恐ろしい小説、新訳で登場。
- 言語日本語
- 出版社光文社
- 発売日2012/9/20
- ファイルサイズ1137 KB
この本を読んだ購入者はこれも読んでいます
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- ASIN : B00H6XBCX8
- 出版社 : 光文社 (2012/9/20)
- 発売日 : 2012/9/20
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 1137 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 206ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 8,966位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 38位光文社古典新訳文庫
- - 51位英米文学研究
- - 159位評論・文学研究 (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2019年4月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
作者の家があった町の近くに住んでいるので、ちょうど良い機会だと思い読んでみました。
ネタバレとなってしまうのでここから先は未読の方は読まないで欲しいのですが、
信頼できない語り手(unreliable narrator)形式の元祖ですから、やはりこれは読んでおく本の1つではないしょうか。
ネタバレとなってしまうのでここから先は未読の方は読まないで欲しいのですが、
信頼できない語り手(unreliable narrator)形式の元祖ですから、やはりこれは読んでおく本の1つではないしょうか。
2016年4月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
難解。子供たちを天使だの何だのと持ち上げる主人公に、「ははあん、これは信頼できない語り手系だな」とか、「いやこれは『アザーズ』だな」とか思いながら読み進んだけれど、なかなか一筋縄にはいかない。ねじが回らない。全編に漂う人物間の異様な緊張感が、わかってはいてもいまひとつ伝わってこなくて、話に入り込めないままあっさり結末を迎えてしまった。マイルズ=ダグラスだと思っていたけど違ったのね。じゃああの導入部は一体…?
2012年9月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
1898年に発表されたH・ジェームズの中編小説です。何といっても怪奇小説のブック・ガイドを見ていると必ず出てくるような小説ですから、私も大学1年生の時、新潮文庫で読みました。今回、光文社文庫で新訳が出る事になり、アマゾンさんに注文し、読了しましたのでとりあえず感想を。
物語は、ある屋敷に宿泊した人が1人ずつ怖い話をするという、百物語のような形で進行します。その中の1人が私はもっと怖い話を知っていると、かって自分の家庭教師をしていたというある女性の手記を話し始めます・・・彼女はある人から、住み込みの家庭教師の仕事を打診されます。教えるのは、屋敷の所有者の甥と姪の2人です。そして、所有者の伯父も彼女好みの美男子です。また、報酬も非常に高価ですが、前任者の女性家庭教師は死亡していて、雇主とは今後没交渉というという奇妙な条件がついています。散々迷った末、彼女は仕事を引き受けます。着任してみると、2人の子供は天使とみがまうほど可愛らしく、屋敷も素晴らしく、杞憂は一気に晴れたかのように見えます。しかし、彼女はまもなく、召使と家政婦しかいないはずの屋敷で、正体不明の男と女に出会います。、家政婦に問いただすと、男は屋敷の召抱えの者で、女は前任者の家庭教師らしいんですが、2人とも既に存在していないということがわかります。つまり亡霊というわけです。しかもこの邪悪な亡霊は、家庭教師にしか見えないようで、子供に取り付いて・・・
一見、ゴシック・ロマン風のストレートな怪談のように見えます。しかし、亡霊は家庭教師にしか見えてないようで、総ては家庭教師の妄想のようにも取れます。これは、作者のH・ジェームズがどちらともとれる様な書き方をしたためと考えられます。怪奇小説の衣はまとっていますが、その実は、異常状況下における登場人物の行動、駆け引きを描いた心理小説と読むのが正しいのかなと思います。さすが大文豪H・ジェームズ、一筋縄にはいきません!!
なお、オペラ化(B・ブリテン)、映画化(D・カー主演)、そして、原作の前日譚ともいうべき妖精たちの森(M・ブランド主演)・・中々面白いです・・があることを付け加えておきます。
いい忘れましたが、翻訳はこなれていて読みやすかったです。
物語は、ある屋敷に宿泊した人が1人ずつ怖い話をするという、百物語のような形で進行します。その中の1人が私はもっと怖い話を知っていると、かって自分の家庭教師をしていたというある女性の手記を話し始めます・・・彼女はある人から、住み込みの家庭教師の仕事を打診されます。教えるのは、屋敷の所有者の甥と姪の2人です。そして、所有者の伯父も彼女好みの美男子です。また、報酬も非常に高価ですが、前任者の女性家庭教師は死亡していて、雇主とは今後没交渉というという奇妙な条件がついています。散々迷った末、彼女は仕事を引き受けます。着任してみると、2人の子供は天使とみがまうほど可愛らしく、屋敷も素晴らしく、杞憂は一気に晴れたかのように見えます。しかし、彼女はまもなく、召使と家政婦しかいないはずの屋敷で、正体不明の男と女に出会います。、家政婦に問いただすと、男は屋敷の召抱えの者で、女は前任者の家庭教師らしいんですが、2人とも既に存在していないということがわかります。つまり亡霊というわけです。しかもこの邪悪な亡霊は、家庭教師にしか見えないようで、子供に取り付いて・・・
一見、ゴシック・ロマン風のストレートな怪談のように見えます。しかし、亡霊は家庭教師にしか見えてないようで、総ては家庭教師の妄想のようにも取れます。これは、作者のH・ジェームズがどちらともとれる様な書き方をしたためと考えられます。怪奇小説の衣はまとっていますが、その実は、異常状況下における登場人物の行動、駆け引きを描いた心理小説と読むのが正しいのかなと思います。さすが大文豪H・ジェームズ、一筋縄にはいきません!!
なお、オペラ化(B・ブリテン)、映画化(D・カー主演)、そして、原作の前日譚ともいうべき妖精たちの森(M・ブランド主演)・・中々面白いです・・があることを付け加えておきます。
いい忘れましたが、翻訳はこなれていて読みやすかったです。
2019年3月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
カズオ・イシグロさんの本を多く訳されている土屋氏の訳というのが決め手で購入しました。読みやすく、また解説も、自分の解釈をさらに深めてくれる内容だったので、良かったです。いきなり原作よりも、日本語で読んでからが良い本なのだなという印象を受けました。
2013年1月29日に日本でレビュー済み
この話は作者のヘンリー・ジェイムズ自身が
実際に聞いた話が基になっているらしいので
本人がその時に感じた印象を何とか小説に
うつせないかと試みたような気もします。
子供の純真さを完全にには信用できない大人
は多いもので、そういった社会通念や規範
に対する諧謔的な姿勢も感じます。
小説としてはホラーに分類されるようですし
冒頭の書き方を見てもそのような期待感を
あおられるのですが、これはかなり計算された
人間の意識の不確かさをえぐる作品のように
思います。ボルヘスやジョイスといった文豪
も何らかの形で影響を受けているかもしれない
と思いました。百年以上も前の作品ですが
まだまだ新鮮な作品でした。
実際に聞いた話が基になっているらしいので
本人がその時に感じた印象を何とか小説に
うつせないかと試みたような気もします。
子供の純真さを完全にには信用できない大人
は多いもので、そういった社会通念や規範
に対する諧謔的な姿勢も感じます。
小説としてはホラーに分類されるようですし
冒頭の書き方を見てもそのような期待感を
あおられるのですが、これはかなり計算された
人間の意識の不確かさをえぐる作品のように
思います。ボルヘスやジョイスといった文豪
も何らかの形で影響を受けているかもしれない
と思いました。百年以上も前の作品ですが
まだまだ新鮮な作品でした。
2014年11月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
綺麗でした。
内容はまだ読んでませんが楽しみです。
また欲しい本があれば買いたいです。
内容はまだ読んでませんが楽しみです。
また欲しい本があれば買いたいです。
2023年4月29日に日本でレビュー済み
物語の中心となる幽霊奇談自体もスリリングで面白いですし、幽霊奇談の主人公の女性家庭教師の真相心理も謎で引きつけられます。
幽霊奇談は冒頭の主人公であるダグラスが朗読した女性家庭教師の手記を、別の第三者が書き写したという体裁をとっており、とにかく、読者を惑わせる仕掛けがいくつもあり楽しめました。なお、最後まで読んでも謎解きはされません。
幽霊奇談は冒頭の主人公であるダグラスが朗読した女性家庭教師の手記を、別の第三者が書き写したという体裁をとっており、とにかく、読者を惑わせる仕掛けがいくつもあり楽しめました。なお、最後まで読んでも謎解きはされません。